コロンブスの生誕地として知られる、イタリア最大の港町、ジェノバ。地中海沿いに半月形の湾が広がり、背景にはアペニン山脈の迫る絶景の地だ。変化に富んだ地形に恵まれた、中世から近世にかけて隆盛を極めた海洋都市国家は、今もその豊かな文化が随所でユネスコ世界遺産として守られている。
19世紀半ばから欧米の富裕層の船旅が始まると、ジェノバは人気の寄港地となった。1860年に開通したジェノバ駅の広場に面して、1897年に開業したグランド・ホテル・サボアは船客に愛用された。王宮に近いことからプリンチペ(王子)と名付けられた駅とホテルは、地下道で結ばれ(現在は閉鎖中)、イタリア各地への列車にすぐに乗り込むことができた。
ホテルの客室にはイタリアでは最初となる温水浴室が備わり、レストランでは山海のグルメが楽しめ、ジェノバの町と自然の魅力もあって人々はゆったり長く滞在した。そして、欧米の上流階級の社交場ともなった。一歩ホテルに入ると、今もそんなベル・エポックの豪奢な雰囲気に包まれる。
客室(117室)はどれも往年の優雅なたたずまいを感じさせるが、何度かの改装を経て最新の設備が導入され、快適だ。ユニークなインテリアを施した部屋もあり、6階には隠し戸を設けた和風タッチの客室も。中2階にはホテルオーナーの鎧兜のコレクションが並ぶ。
地下にはアラブ風の大理石風呂や温石室を備えたスパも。パステルブルーの色調がリゾート風のレストラン、アクアマリーナは地中海料理に定評がある。隣接する姉妹ホテル、コンチネンタル・ホテル・ジェノバでは気軽な地元料理が終日楽しめる。夏は最上階のテラスレストランから、活気あふれる港を一望しながら、食事やドリンクを。
階下のプリンチペ広場の楽しいにぎわいを、ホテルを背景にしてコロンブス像が見守っている。駅の開業を記念して建てられたというが、意外にもジェノバにコロンブス像はこれしかない。幾度かの大航海を成したコロンブスだが、ジェノバに一度も戻ることはなかった。
ジェノバに残されているは、世界最古とされるジェノバのサン・ジョルジョ銀行に向けた融資依頼の手紙だけだ。結果的にこれは断られ、コロンブスはスペイン王室に支援を得る。インディオの少女が寄り添う、コロンブス像の水平線を見つめるまなざしはどこか寂しげだ。

