東京都生まれ。学習院大学卒業後、日本茶インストラクターの資格を取得。2005年、日本茶専門店「表参道 茶茶の間」をオープン。良質な茶を選び抜く天性のセンスと、固定観念にとらわれない自由な発想で、「表参道 茶茶の間」のオーナーとして日本茶の魅力を広く伝え続けている。自著『日本茶ソムリエ和多田喜の今日からお茶をおいしく楽しむ本』(二見書房)。
その昔から日本人の心と体に寄り添い、日々の暮らしに欠かすことのできない嗜好品であった日本茶。同時にそれは、あんという日本で洗練され、独自の発展を遂げた甘味文化に、なくてはならないお供でもある。しかしながら、お茶の世界もあんの世界も、種類や味わいは膨大である。そこで、どんなお茶がどんな甘みをより引き立て、幸せなマリアージュを生むのか、2005年より日本茶専門店「表参道 茶茶の間」を営む和多田喜氏に指南してもらった。
今よりも日本茶への需要が少なかった時代に、その可能性にいち早く気付き、日本茶インストラクターの資格を取り、産地を訪ね歩き、いいお茶をおいしく淹れて供するカフェを開いた和多田氏。
「一口にあんといっても、上生菓子からどら焼きのような日常菓子までいろいろあります。ごくざっくりいって、茶席の菓子のようにあんの甘みがぎゅっと凝縮した強いものには、抹茶が合います。抹茶の渋みがあんの甘みを切って、その輪郭をぐっと引き立ててくれるから」と言う。逆に何でも合わせられる万能選手が、ほうじ茶や番茶だそう。小豆の香ばしさと、ほうじ茶や番茶の煎った香ばしさとの相性が良く、どんな甘みでも受け止めてくれるのだそう。ただ、何にでも合うということは、針の穴を通すようなペアリングではなく、無難な相性ということでもあるとか。そこで至高の相性として出番になるのが、煎茶の数々だ。
「素材や製法にこだわりにこだわった和菓子を、究極に高めてくれるのは煎茶なんですね。それはうちのようにシングルオリジンのお茶だからできることでもあるのですが。数あるなかでもあんと相性がいいものといったら、『桜薫』でしょう。クマリンというシナモンの中に含まれる香りの物質を含有していて、実際に桜の香りがするよう。それが、繊細なあんとの相性が抜群に良い。特に白小豆や白あんのお菓子などには最高です。一方、乳製品やバターなどを加えたあんと相性が良いのが『天薫』という茶葉。グラッシー(草のような)な香りをふんだんに含んでいる『おくひかり』という品種で、乳製品の油脂分をいい意味で爽やかに切ってくれるのです」と説明する。
また、同じお茶でも、甘みが強めの粒あんの菓子には濃いめに、さらしあんのように、あっさりした甘みには薄めに淹れるなど、淹れ方を調節することも大切だという。
肝心の淹れ方だが、日本茶は難しいと思われがちだが、和多田氏いわく「おいしいお茶は何℃で淹れてもおいしいんです。温度を気にするよりも、セカンドポット(急須からいったん移す容器)を使うことをお薦めします」だそう。急須で入れたお茶を直接、湯飲みに注いで、濃すぎた、薄かったと、一喜一憂するのではなく、セカンドポットに移したお茶を味見してみて、お菓子を一口食べ、濃ければ湯を足し、薄ければ、もう一度急須に戻すといった具合で気軽にトライしてみればいいとのこと。日本茶とあんの楽しみが広がりそうだ。
●表参道 茶茶の間
東京都渋谷区神宮前5-13-14
TEL 03-5468-8846
※『Nile’sNILE』2022年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。

