食

美なる哉 三色の諧調 琥珀

小泉氏の料理を見るなり、「トリュフなんか使ったらズルイだろう」と石川氏。荒っぽい言葉とは裏腹に、満面の笑み。周囲にも伝染し、笑い声の輪が広がった。それが、「おいしいものを食べると、不思議と笑いたくなる」ことにも似た、自然なリアクションのように感じられた。

Photo Masahiro Goda Text Junko Chiba

小泉氏の料理を見るなり、「トリュフなんか使ったらズルイだろう」と石川氏。荒っぽい言葉とは裏腹に、満面の笑み。周囲にも伝染し、笑い声の輪が広がった。それが、「おいしいものを食べると、不思議と笑いたくなる」ことにも似た、自然なリアクションのように感じられた。

ズワイガニの旬のおいしさを黒トリュフが香り高く引き立てる一品。ズワイガニのメスはすでに漁期が終了。この日は今季最後だった。ズワイガニは越前のもの。虎白では、冬はズワイガニ、夏は毛ガニがコースを彩る。器は埼玉県の陶芸作家、山田泰三(やまだたいぞう)氏のもの。虎白という店名を表現したかのような虎模様が渋い。

「虎白の特徴の一つをわかりやすく表現しようと、今回はトリュフを使いました」と小泉氏が言うように、彼の料理はトリュフやキャビア、フォアグラ、フカヒレなど、他ジャンルの料理で使う食材が積極的に取り入れられている。と言っても、奇をてらおうとか、高級食材で“おいしさ増し”をしようといった考えはまったくない。そんなのは浅知恵。日本料理の幅と奥行きを広げることへの挑戦なのである。

小泉氏は創業から石かわを支えてきた。師匠と同じく、食材は産地指定ではなく、その日最良のものを厳選して取り寄せている。石川氏とは岡ざき時代から数えると17年もの付き合いになる。

「外国の食材を使っても、『和』の中の軸はブレない。日本料理の伝統的なスタイルを踏襲しながらも囚われず、日本の旬の食材そのもののおいしさと、それを引き出す調理法、組み合わせを突き詰めて、今までにないおいしさを表現する。それがいわば、虎白の料理哲学です。だから外国の食材をメインにドンと出すようなことは絶対にありません」

その言葉通り、今回の料理も、黒トリュフは蟹を引き立てるための脇役。「ズワイガニのオスとメスの両方を、蟹味噌と一緒にあえて、下に焼き茄子と白味噌の出汁を張り、上からスライスした黒トリュフを散らした」一品である。出汁は生姜、ニンニクのみじん切りと蟹の甲羅を一度油で炒めて、和風ビスクのように仕立てられている。蟹の身の甘さと、メスガニの卵のコクのある旨みに加えて、蟹の甲羅の香ばしさと白味噌のやさしい味わいが生きた出汁が一つに溶け合って、さらに黒トリュフ特有の香りが立つ。虎白でしか味わえないものである。

「日本料理には、旬の食材をおいしく食べる定番のものがあります。例えば『夏になると、鮎の炭焼き』というように。もちろんおいしいけど、ほかの店でも楽しめますよね。うちはそこから離れて、生きた鮎を丸ごと、まるで泳いでいるような姿のままに素揚げにして、トリュフのソースで食べるなど、新しい料理を提供しています。それでお客さまに『えっ、鮎って、トリュフと合わせると、鮎の苦味の新しい味わい方になるね』と喜んでいただいています。そこが楽しさ。作っている僕も楽しいんです。ほかにもフォアグラを根菜で炒めて溶かし、そこに出汁を入れて作った鼈甲餡を海老芋にかけるとか、ゆでた車海老をすり身状にしたものをつなぎなしで作るしんじょとか。今までにない形で楽しんでいただけるように創意工夫をしています」

虎白は、師匠の石川とともに腕を振るった石かわが移転した後、その誕生地を引き継ぐ形で2008年にオープンした。その時に石川氏に言われたのは、「新しいことに挑戦しろよ。自分で一生懸命考えて、好きにやってくれ。お願いね」ということ。その一言を胸に、期待に応えたいと10年歩んだ年だったと言えよう。

  • 美なる哉 三色の諧調 琥珀 美なる哉 三色の諧調 琥珀
  • 美なる哉 三色の諧調 琥珀 美なる哉 三色の諧調 琥珀
  • 美なる哉 三色の諧調 琥珀 美なる哉 三色の諧調 琥珀
  • 美なる哉 三色の諧調 琥珀
  • 美なる哉 三色の諧調 琥珀
  • 美なる哉 三色の諧調 琥珀

● 虎白
東京都新宿区神楽坂3-4
TEL 03-5225-0807

※『Nile’s NILE』2018年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。

真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

NILE'S MEMBERS

新規メンバー募集開始

選ばれたひと、こと、もの情報
「LUXE LIFE STYLE」をともに過ごす新会員を募集します。

*会費等一切かかりません(無料)