五山の送り火で有名な大文字山や銀閣にほど近い、左京区の閑静な住宅地にある「盛華亭」。祇園「盛京亭」で長年チーフを務めた佐々木三義さんが1982(昭和57)年に独立。現在は息子の幸司さん夫婦が店を受け継ぎ、今年で36年を迎える。二人がここを切り盛りするようになるまでには、さまざまな物語があった。
幸司さんが店に入ったのは18歳の時、以来数年間は材料を切るだけの日々が続く。一方、父の三義さんは「ずっと鍋振って、店が終わったらすぐ帰るから一言も話さん日も(笑)。それで今オヤジに何かあったらやばいと思って」――幸司さんは妻の由里子さんと相談し、知り合いが営む銀閣寺近くのバーで、三義さんには内緒で昼間チャーハンを作らせてもらい、秘かに練習を始めた。
ほどなくバーのランチチャーハンは、近くの京大生たちがこぞって食べに来るようになり、連日満員。昼夜“ダブルワーク”が4年半続いたころ、三義さんから調理場を任せるという話が出た。幸司さんは、「バーでランチのチャーハンを作らせてもらったおかげで、自分の料理をお客さんに出してお金をもらうことに自信が持てたんです」と振り返る。
三義さんは5年前に完全に引退。今では忙しくなると、高校2年の長女が店を手伝う。大文字山をバックに並ぶ親子3人の表情は、よき日本の家族の姿を彷彿とさせる。現在48歳の幸司さん、あと数十年はこのまま鍋を振り続けてくれるに違いない。
● 盛華亭
京都市左京区浄土寺馬場町39-4
TEL 075-751-7833
※『Nile’s NILE』2018年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。

