五条通から大和大路通を北に上がると、暗がりの中に煌々と照らされた店の看板が見えてくる。「北京亭」は東京、横浜の中華料理店で腕をふるった大坪利明さんが1984(昭和59)年に開いた、カウンター10席ほどの店だ。
宮川町、祇園あるいは南座からも近く、深夜12時まで営業しているとあって、舞妓、芸妓衆や茶屋の女将、歌舞伎役者もよく訪れる。それに加え、東京から40年間必ず月1回通う会社経営者をはじめ、近隣、遠隔地のおなじみさんが多い。接客担当の奥さんからそんな話を伺っている間に、寡黙な大坪さんがスッと料理を出してくれた。
京都の中華料理店では珍しく、鶏と豚骨で丁寧にとったスープがたっぷりかかった「もやしそば」と、きれいな折り目のついた「ギョウザ」。分厚いレモンが添えられ、黄金色の衣をまとった「豚の唐揚げ」など、どの料理も味と見た目がどこか際立ち、ついもう一皿頼んでしまう。
ただ最近では大坪さんの体調が悪いと、急に店を休みにすることもあるという。また3年前には、奥さんが店の近くで交通事故に遭ってしまった。「見舞い客は10年前、お父さんが入院した時より、私の方がたくさん!」と明るく話して、店の客をドッと笑わせてくれる。
大坪さんが作った料理を食べ、奥さんのおしゃべりで明日への英気を養う。そのために繁華街から少し離れたこの店の灯りを頼りに、今日も多くの客が訪れるのだろう。
● 北京亭
京都市東山区大和大路五条上ル山崎町373
TEL 075-561-6106
※『Nile’s NILE』2018年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。

