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今日飲むか、明日飲むか!! 若林英司のワインセレクション

幅広い知識と鍛え抜かれたセンスで、時にストレート、そして時にマニアックなセレクトを見せてくれる「エスキス」「アジル」のチーフソムリエ、若林英司さん。今まさに百花繚乱(りょうらん)の様を呈している日本ワインの数々の中から若林さんが見定めた、勢いと実力を兼ね備える8本を紹介する。

Photo Masahiro Goda Text Izuzmi Shibata

幅広い知識と鍛え抜かれたセンスで、時にストレート、そして時にマニアックなセレクトを見せてくれる「エスキス」「アジル」のチーフソムリエ、若林英司さん。今まさに百花繚乱(りょうらん)の様を呈している日本ワインの数々の中から若林さんが見定めた、勢いと実力を兼ね備える8本を紹介する。

若林英司(わかばやし・えいじ)
1964年長野県生まれ。小田原「ステラ マリス」、恵比寿「タイユバン・ロブション」のシェフソムリエを務め、「レストラン タテル ヨシノ」の総支配人に。2012年から「エスキス」の支配人兼チーフソムリエに、2016年からは「アジル」の支配人兼チーフソムリエを兼任。

約20年間にわたって日本ワインを注視し続けてきた若林英司さん。海外のソムリエに日本ワインを紹介する機会も増えたという。シックな雰囲気が色濃い『アジル』の店内にて。

近年、ますますの充実を見せている日本ワイン。今回若林英司さんが選んだのは、日本ワインの躍進を支えてきた造り手、流れに新しく加わった若い造り手、それぞれからバランスよくセレクトした8本だ。 「日本ワインの造り手を大まかに分けると、大手企業、地域に根ざした歴史あるワイナリー、個人規模の小さなワイナリー、の三つの存在感が大きいと思います」と、若林さん。

大手では、キリンによるメルシャン、キッコーマンによるマンズワイン、そしてサントリーなどが有名。一方、地域の歴史あるワイナリーは中規模なところが多く、今回挙げた中では山形のタケダワイナリー(30ページ)、山梨の中央葡萄酒(34ページ)が該当する。個人規模のワイナリーは、信念を持って葡萄の栽培から取り組む〝ドメーヌ〟のスタイルが多い。 「この20年ほどで、三者が三様のスタンスでワインの品質を向上させてきました。理想を追求する個人。ハイエンドをブラッシュアップしつつ、多くの人が飲める手ごろ価格でもおいしさを実現した大手。その両方をバランスよく取り入れて、ステップアップした中堅。さまざまな造り手が、おのおのの立ち位置からワイン造りに真摯に向き合ってきた成果が出て、それぞれに将来もあるのです。〝造り手の多様性が前提〟という、海外のワイン先進国と同じ状況が整った。日本ワインは今、そんな充実の時を迎えています」

こうした全体的なレベルアップの背景にあるのが、葡萄の品質向上だ。この20年ほどで大手や中堅は意欲的に自社畑を増やし、葡萄の栽培にも力を入れてきた。葡萄を農家から買い付ける場合も、コミュニケーションを密にして、望む品質の葡萄を栽培してもらっている。個人の造り手も、個人ならではの自由さでよりよい栽培を模索している。 「醸造の技術も上がっていますが、何よりも葡萄のポテンシャルが上がりました。〝ワインは農作物〟とはよく言ったもの。かつては『ヨーロッパに負けない力強いワインを造らねば』という思いのためか、補糖、補酸、濃縮といった手を加えた醸造も多かったのです。それが、『もっと自然に素材の特徴を出そう』という方向に変わった。それを、葡萄の品質の向上が下支えしたのです。葡萄がよいから、余計な手間をかけなくてもおいしいワインができるようになりましたね。世のナチュラル志向も、この流れを後押ししています。こうしてワインが葡萄を素直に表現するようになったため、ワインから風土を感じ取ることができるようになった。とても健全な状態です」

  • 今日飲むか、明日飲むか!! 若林英司のワインセレクション 今日飲むか、明日飲むか!! 若林英司のワインセレクション
    タケダワイナリー サン・スフル白 2017。『タケダワイナリー』(山形県上山市)は、1920年の創業以来一貫して土地を反映するワインを造り続けている老舗。その志を5代目の岸平典子さんが継ぎ、ナチュラルかつ味わい深いワインを世に送り出している。食用でもおなじみのデラウェア種を100%使用した微炭酸の品。発酵中に瓶詰めし、発酵の際に発生する炭酸ガスをワインに溶かし込む。亜硫酸を使用しない『サン・スフル』で醸造。無濾過(ろか)のため、濁りがあるのも特徴だ。『素朴な製法で造る、非常にナチュラルな味わい。デラウェア特有の甘みがほのかにあり、のどごしよく、葡萄をかみ締めたような素直なおいしさ』。アペリティフに合う、楽しい一本だ。
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    ノーザンアルプスヴィンヤード オルター シャルドネアンウッド 2017。長野県大町市、北アルプスを望む標高約750mの場所にある『ノーザンアルプスヴィンヤード』。寒暖差が大きく、果樹を育てればシャキッとして酸のある仕上がりになる同地。ステンレスタンクを用い、たるを使わない『アンウッド』で醸造する。『きれいな酸がのり、ミネラル感もある。“この地らしいシャルドネ”をナチュラルに感じる』。ワイナリーの設立は2015年。ワインに魅せられ、IT業界から転職した若林政起さん(実は若林英司さんのいとこ)が、畑の開墾から手がけた。『alter(オルター)』とはフランス語で『変える』の意味。現状で満足せず、変化し続けるという思いを込める。
  • 今日飲むか、明日飲むか!! 若林英司のワインセレクション 今日飲むか、明日飲むか!! 若林英司のワインセレクション
    セイズファーム ソーヴィニヨンブラン 2017。富山県氷見市に2011年に誕生した『セイズファーム』。自社栽培の葡萄のみでワインを造る。畑があるのは、立山連峰を望み富山湾を見下ろす開けた丘陵地。海からの涼しい風が、キリッとした酸味ののる葡萄を作る。『ソーヴィニヨンブラン特有のハーブの香り、柑橘……爽やかな要素が前面に出ていて、比較的ドライ。バランスよくまとまっている』という印象。『富山のおいしい海産物にもよく合う』というワインだ。
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    フェルミエ アルバリーニョ 2016。アルバリーニョは、スペイン北西部のガリシア地方、リアス式海岸で知られる地が原産といわれる品種。ジューシーな果実味がありながら、キレのある酸味も併せ持っている。海風を受けるため、海の塩を思わせる味わいがあるのも特徴だ。そんなアルバリーニョにほれ込み、“日本でのアルバリーニョ”の可能性を追求すべく、証券業界から転職して2006年にワイナリーをオープンしたのが『フェルミエ』の本多孝さん。選んだ土地は、故郷新潟県にある海岸砂丘。『非常にミネラル感があり、酸がキリッとして、旨みもしっかりしている。貝と合わせて飲むと、とてもおいしい』。“海のワイン”とも呼ばれるアルバリーニョの魅力を、日本で開花させた一本である。
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料理との合わせを考えても、現在の日本ワインの流れは好ましい方向にある、と話す。 「日本料理はもともとですが、フランス料理やイタリア料理も、食材を前面に出したり、ハーブやスパイスの香りを軽やかに組み合わせるものが多く、重厚さは影を潜めています。なので、これからのワインで求められるのは、旨みの要素がしっかりありつつナチュラルで、葡萄の味わいが深く、かつヘビーじゃないという性質。日本は重いワインを造る必要はまったくない、と思います」

と同時に、日本料理に合う、かつ洗練されたワインがもっと増えれば、と若林さんは期待を込める。 「日本ワインの香りのニュアンスには、味噌や醤油といった日本の発酵食品の風味があるので、基本的に日本料理と日本ワインは調和します。ただ、家での食事に合う日本ワインはあるのですが、洗練された和食に合う、ナチュラルかつ繊細で格調高いワインは少ない。ここが充実すれば、海外へのインパクトという意味でも、可能性が一気に広がるはず」

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    中央葡萄酒 キュヴェ三澤 明野甲州 2015。1923年創業の『中央葡萄酒』(山梨県甲州市)は、『グレイスワイン』のブランドで知られる名門ワイナリー。4代目で現社長の三澤茂計(みさわしげかず)さんと、娘で栽培醸造責任者を務める彩奈(あやな)さんの研鑽と尽力で、世界に通用するワインを生み出すメーカーへと飛躍した。明野は、独特の地形から雨雲が発生しにくく、日照時間が日本一といわれる場所。この恵まれた地で、試行錯誤の末に到達した栽培方法を用い、十分に成熟させた甲州種の葡萄で造る。『甲州特有のきれいな酸を保ちながら、凝縮感もある。糖度を上げるという甲州にとって難しい課題を乗り越えた、“新しい甲州”と呼ぶにふさわしい堂々たるワイン』
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    ボーペイサージュ 津金 ラ モンターニュ メルロー 2012。熱烈なファンの多い『ボーペイサージュ』(山梨県北杜市)岡本英史さんのワイン。岡本さんは八ヶ岳の南斜面、標高750mほどの津金の地を開墾し、1999年にワイナリーを立ち上げた。細やかな世話のもと完全にオーガニックで葡萄を栽培し、天然の酵母で醸造するなど、葡萄の力だけでワインを造る姿勢を徹底。『究極にナチュラルでいて、個性がある。鮎やウナギ、フキノトウといった苦みやクセのある素材に合う、春先から初夏におすすめの一本』
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    奥出雲ワイン カベルネソーヴィニヨン 2016。島根県の出雲平野の縁、山あいに入った木次(きすき)の地にて、1990年に設立された『奥出雲ワイナリー』。自然な乳製品作りで知られる木次乳業の創業者にして、日本の有機農法の草分け的存在でもあった佐藤忠吉さんを中心に、地元の名士や近隣の葡萄農家たちが集まって立ち上げられた。『こちらが造るカベルネソーヴィニヨンのワインは、果実味があり、カシスやブラックベリーの香りも備えつつ、決して重すぎない。つややかさもあり、のどごしがよい』。同社の誠実な姿勢をそのまま反映したかのような、バランスのとれたきれいな味わいが特徴だ。
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    ココ・ファーム 第一楽章 2015。栃木県足利市の郊外にある『ココ・ファーム・ワイナリー』。知的障害者の支援施設『こころみ学園』が母体で、同園の生徒らが1950年代に始めた葡萄栽培にルーツを持つ。ワイナリーは1984年設立。89年に着任した醸造技師ブルース・ガットラヴさんのもとで自然な栽培と醸造を推進し、飛躍的な品質向上を実現。『第一楽章』は、日本品種を追求するコンセプトで造られた、マスカット・ベーリーA種によるスペシャルキュヴェ。『甘くなりがちな同種だが、甘くない、それでいて熟した風味を引き出した画期的な一本。野生酵母を使用し、無濾過で仕上げた自然な造り。複雑さと素直さを併せ持つおいしい赤』
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さらに若林さんは、〝世界の中で、日本ワインの存在感を高めるには〟という視点で考えた場合、最も効果的なのは、ずば抜けたトップキュヴェが登場することだという。 「要は、ロマネ・コンティやオーパス・ワンのような、誰もが名前を知っている王者のようなキュヴェ。『日本にはあのワインがある、すごいね』と海外の人がイメージする、その核になる存在があると、日本ワインの認知度は桁違いに上がります」〝繊細〟という言葉でよく表現される日本ワインの在り方と、〝世界の圧倒的〟なトップキュヴェの在り方を両立させることはできるのか。 「まあ、難しいでしょうね(笑)。でも、方法はあるかもしれない。今の日本ワインの進展を見ていると、いつかそんなキュヴェが生まれてもおかしくないのでは、と思います」

※『Nile’s NILE』2018年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。

真のラグジュアリーとは何か

真のラグジュアリーとは何か

ラグジュアリーの定義が、音を立てて変わりゆく時代にあっても、最高峰のプロダクトを手にし、その圧倒的な美しさに触れる高揚感が、人生を鮮やかに彩る原動力であることを、私たちは知っています。
物質的な豊かさが、依然として私たちの精神を支える強靭な基盤であることに、言を俟ちません。
真の贅沢はそこから始まります。
アルゴリズムが弾き出す「正解」を疑い、自らの審美眼と直感で未踏の価値を切り拓く。
その「知的冒険」こそが、グローバリズム崩壊後の世界に残された、最後のラグジュアリーではないかと考えます。
Nile's NILE Digitalは、物質と精神、伝統と革新、都市の快楽と野生の回復――この相反する要素を「アンビバレンス」として愉しむ、選ばれた冒険者たちのためのプラットフォーム。
混沌を優雅にサバイブするための視座と、本物の体験へのアクセス権。
ここはまさにDesigning for the Exceptionalsの砦。
知的冒険者たちが集い、次なる航路を描くための、現代の港となります。

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